スポーツをされる方へ

A.体幹を鍛える必要性

スポーツをする上では、体幹を鍛えることはとても大切な要素だといわれています。体幹の安定性に関わる代表的な筋肉には、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群、横隔膜、腸腰筋などがあります。
これらの筋肉は、それぞれが腰椎や骨盤の関節一つ一つの動きをコントロールして、かつ腹圧を高めることで、安定したブレない動きを実現してくれます。
人間の動きの根本となるため、競技力アップにつながるのはもちろん、けがの防止にも有効です。体幹をしっかり鍛えることが、楽しいスポーツライフに繋がります。
スポーツごとに、「身体をひねる」「蹴る」「姿勢を保つ」「動作の切り替えを行う」といった、体幹の使い方は変わってきます。代表的なスポーツを例に体幹の関わりをご紹介いたします。

① 「身体をひねる動作」

代表的なスポーツは、野球やゴルフなどです。
バッティングなどのスイングの動きは、次のような要素から成り立っています。
1.股関節をひねる
2.そこにつながる骨盤も回転させる
3.体幹の筋肉が連動し、その先にある腕が動いてバットを振る。

スイング動作は、体幹が全ての動きの軸になっています。
この軸がぶれてしまうと、スイングが安定しませんし、キレのある動きで素早くバットやクラブを振れません。野球やゴルフでは、ひねりを加えた時にぶれないようにする体幹トレーニングがとても大事なのです。そのため、むやみに鍛えるのではなく、柔軟性を高めつつ強化することが重要です。
固定したトレーニングよりも腹筋運動にひねりを加えたり、動的ストレッチを取り入れたりするのがおすすめです。
すると、ボールに対してからだを反射的に動かせるようになるので、速い球にもしっかり反応できるようになりますよ。

② 「蹴る動作」

代表的なスポーツは、サッカーや格闘技などです。
強く蹴ろうとする時には、足の筋肉だけを使ってはいけません。体幹を使って、足を振り子のように動かすことが必要です。蹴る動きは、体幹の筋肉の伸張と収縮を利用しています。
例えば、ボールを右足で蹴る場合…。
左足を前に大きく踏み込んだら、右足が後ろに大きく残って、振り上げられる。すると、右側の股関節まわりの筋肉が大きく引き伸ばされます。
それをギリギリまで伸ばして放せば、最大限のパワーを発揮して、蹴ることができるのです。
この一連の動作で主に働くのが、体幹を構成する腸腰筋です。
ここがしっかり働けば、股関節の屈曲がスムーズに起こり、上半身から下半身への力も確実に伝わります。腸腰筋は、鍛えにくい筋肉なので、しっかりこの筋肉を意識しながらトレーニングすることがいいでしょう。

③ 「姿勢を保つ」

代表的なスポーツは、水泳や自転車、マラソンなどです。
水泳、特にクロールの場合は、水中で手の先から足の先までが、一本の棒のようにまっすぐ伸びている姿勢が良いとされています。この姿勢は、水の抵抗が少なく推進力が高いため、スピードが出ますし、余計な体力を使うことなく長く泳げるのです。
水泳をする人は、腹筋を鍛えることで、フォームのブレを防いで、スムーズな動きを作ることができます。

自転車(ロードバイク)においては、乗る体勢が、いわゆるシティサイクルとは違います。
ロードバイクには、体幹が地面と平行になるような体勢で乗ります。この体勢は、風の抵抗を受けにくく、長距離を走るためには欠かせない条件となります。
しかし、この体勢を保つには、足だけでなく、腹筋と背筋でしっかりとからだを支える必要があります。
足だけでこいでいると、すぐに疲れてしまいます。
しかし、体幹が強化されると、長距離を乗っても疲れにくくなります。
腹筋と背筋を強化して、足ではなく、体幹でこぐ感覚をつかむとよさそうです。

マラソンにおいても、ランニングフォームの崩れの防止に体幹が重要になります。
体幹が弱いと地面から反発してくる力に耐えきれず、体が折れ曲がってしまいます。その結果、エネルギーを大幅にロスしてしまいます。足だけでなく、腹筋と背筋でしっかりとからだを支える必要があります。

④ 「動作の切り替え」

代表的なスポーツは、テニスや卓球、バドミントンなどです。
激しいボールのラリーを制することが重要なスポーツの動きでは、急な動作の切り替えが肝心です。
相手のボールを打ち返すには、いち早くボールが来る位置を見極めて素早く移動する。
自分のタイミングで一番力が入る状態で打つ。このような動きが理想です。
この瞬間的な動作の切り替えをコントロールするのが、体幹の筋肉です。相手の動きに応じて、瞬時に力を出すためには、筋肉の強さだけでは足りません。柔軟性や下半身のバネの強さなども、重要なポイントになります。したがって、テニスをする人は、上半身と下半身の連動を意識した体幹トレーニングが効果的です。

いかがでしたでしょうか?
体幹を鍛えるには機械を使った最新メソッドもあります。
体幹を鍛えてもっと楽しく、そしてケガや故障を防いで安全に、スポーツライフを送りましょう。

B. 運動中にケガをしてしまったら

もしケガをしてしまったら、ということも想定して知識の準備をしておくことも大切です。
ここでは基本となる、急性症状の対処方法と、起こりやすいケガをいくつかご紹介します。

① RICE 処 置

[ はじめに ]
スポーツ現場で「ケガ」が起こった時に、病院にかかるまでの間、損傷部位の障害を最小限にとどめるために行なう方法を「応急処置(RICE 処置)」といいます。この応急処置を適切に行えば、早期にスポーツ復帰を果たすことができます。しかし、頭・首・背部の損傷、大量の出血、意識消失、脱臼や骨折を疑う著名な変形、けいれん発作などがある「ケガ」の場合は、すぐに救急車やドクターを呼び、むやみに動かさないようにしましょう。

[ 1.Rest(安静) ]
損傷部位の腫脹(はれ)や血管・神経の損傷を防ぐことが目的です。副子やテーピングにて損傷部位を固定します。

[ 2.Ice(冷却) ]
二次性の低酸素障害による細胞壊死と腫脹を抑えることが目的です。ビニール袋やアイスバッグに氷を入れて患部を冷却します。15分~20分冷却したら(患部の感覚が無くなったら)はずし、また痛みが出てきたら冷やします。
これを繰り返します。(1~3日)

[ 3.Compression(圧迫) ]
患部の内出血や腫脹を防ぐことが目的です。
スポンジやテーピングパットを腫脹が予想される部位にあて、テーピングや弾性包帯で軽く圧迫ぎみに固定します。

[ 4.Elevation(挙上) ]
腫脹を防ぐことと腫脹の軽減を図ることが目的です。損傷部位を心臓より高く挙げるようにします。

② 足首捻挫

捻挫とは、関節を支持している靭帯がいたむことです。足首の捻挫の多くは、足首を内側に捻って起こります。そのため、足首の外側の靭帯がいたみます。外くるぶしの前と下に痛みがあり、指で押さえると痛みがあります。ただし、受傷後に体重をかけられない、腫れが強い、皮下出血がみられるなどの症状がある場合は注意が必要です。小児では小さな骨折を伴うものが多く、検査が必要です。応急処置は、RICE 処置にしたがって行いましょう。

③ 肉離れ

筋肉が収縮するとき、内部では、互い違いに並んだ筋線維の束が収縮してかみ合う構図になっています。強く収縮した筋肉がそのまま固まってしまった状態がこむら返りです。その筋力に筋線維が負けた時に「肉離れ」は起こります。
応急処置は RICE 処置にしたがって行いましょう。
ストレッチ痛が取れて、健側と同じ通常のストレッチ感になるまではジャンプやダッシュは避けましょう。

④ アキレス腱断裂

踏み込み・ダッシュ・ジャンプなどの動作でふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が急激に収縮した時や、着地動作などで急に筋肉が伸ばされたりした時に発生します。腱の退行性変性(いわゆる老化現象)が基盤にあると考えられており、30~50歳のスポーツ愛好家に多く発生しています。

[ 症 状 ]
受傷時には断裂音を自覚することもあります
受傷直後は踏ん張ることができずに転倒したり、しゃがんだりしますが、比較的痛みは軽く、しばらくすると歩行可能となることも少なくありません。しかし、歩行が可能な場合でもつま先立ちは出来なくなります。
アキレス腱断裂部に皮下の陥凹(へこみ)を触れ、同時に圧痛がみられます。
うつ伏せで膝を直角に曲げた状態でふくらはぎをつまむと、正常では足関節は底屈しますが、患側ではこの底屈がみられなくなることが特徴です。ほとんどの場合、通常のレントゲン検査では異常を認めません。
応急処置は RICE 処置にしたがって行いましょう。
おおむね 6 か月ほどは全力でのスポーツ活動を控えることになるでしょう。

⑤ 鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)

ランニングや起き上がり、キック動作で鼠径部やその周辺の色々なところに痛みが出現します。
体幹から股関節周辺の拘縮や筋力低下や不自然な使い方によって、

  1. 1.可動性(筋や関節の柔軟性)
  2. 2.安定性(骨盤を支える筋肉)
  3. 3.協調性(体幹と下肢の動きが効果的に連動すること)

の機能が低下し、痛みと機能障害の悪循環が生じて症
状が慢性化します。

足首の捻挫、下肢の打撲や肉離れ、腰痛などの何らかの原因で可動性、安定性、協調性に問題が生じたまま、無理をしてプレーを続けると、体幹から股関節周辺の機能障害が生じやすくなります。また片足で立ってキックを多くするサッカーの動作そのものが発症の誘因になります。

[ 治 療 ]
① 筋の拘縮に対するマッサージ
② 筋力低下に対する筋力訓練
③ 股関節だけに負担が集中しないようにするために、上肢から体幹、下肢を効果的に連動させる協調運動の訓練を行います。

[ 予 防 ]
① 足首の捻挫などのケガをしたら、身体全体のバランスが崩れるのでそのまま無理にプレーを続けない。
② 股関節周辺の拘縮や筋力低下が生じたら早めに修正する。
③ 運動前の準備運動に体幹から下肢を効果的に連動させる協調運動を取り入れて、股関節だけの動作を避ける。
④ 特にオフ明けに発症しやすいので、オフ明けには協調運動を取り入れた準備運動を入念に行う。

⑥ 仙腸関節障害

仙腸関節は骨盤を作っている左右の腸骨と仙骨の間の関節です。この関節にはサイドステップや、片足に荷重するときに大きな力が加わり、その繰り返しによって関節の障害が発生します。腰痛の訴えで来院するため、病院で腰の骨や椎間板の検査を行っても原因が解らず、原因不明の腰痛とされることがあります。

[ 特 徴 ]
・痛みは背骨ではなく、骨盤の後上腸骨棘付近にある
・女性アスリートに多い
・サッカー、ソフトボールなどの片足に強い荷重がかかる種目に多い
・他の原因による腰痛と合併することがある
・休息によって一旦治っても、競技を再開すると再発することが多い

[ 診 断 ]
・仙腸関節に圧痛がある
・片足立ちで痛みが再現される
・仙腸関節に回旋 or 開排ストレスを加えると痛みが再現される
・レントゲンや MRI では異常がみられない

・仙腸関節のブロック注射が効く

[ 治 療 ]
・痛みに応じて消炎鎮痛剤、ブロック注射
・骨盤ベルト、コルセット
・股関節や脊柱の可動性を高めるストレッチ
・仙腸関節の安定性を高める体幹深部筋トレーニング